生地を糸で縫いあわせる代わりに合成樹脂で圧着したダウンが人気だ。すっきりしたシルエットが特徴だが、「圧着部分がはがれる」として、ユニクロなど一部メーカーについて、クリーニング店が受け付けを拒否するケースが相次いでいる。なぜか。
「剝離(はくり)等の事故が起きた場合の責任は負えません」。愛知県津島市の「太陽舎クリーニング店」では昨年11月から、一部メーカーの圧着式ダウンを受け付ける際、こんな趣旨の同意書にサインを求め始めた。同店の辻村卓也さん(43)は「樹脂の劣化が原因なので、いくら気をつけて洗っても剝離は防げない。でも実際に剝離すれば、お客様から『洗い方が悪い』とお叱りを受ける」。
同意を求めているもののひとつが、ユニクロが2015年に発売した「シームレスダウン」だ。軽くて暖かい上に、縫い目が少ないため羽毛がふき出さず、雨もしみこみにくいのがセールスポイントだ。同様のダウンは他社が既に売り出していたが、ユニクロは1万円台と手頃な価格で人気を集めている。だが、同社によると、圧着に使われるポリウレタン樹脂は、空気中の水分や紫外線などと反応して、経年劣化が避けられない。新品のまま保管しても3年ほどで、剝離やべたつきなどの問題が生じるため、ラベルにも明記してきた。
クリーニング業界紙「全ドラ」編集長の中沢孝治さん(47)は、「圧着式のダウンは他にもあるが、ユニクロが販売を始めたことで消費者に一気に広がった。劣化することはあまり知られておらず、しかも接着のはがれがはっきり現れるのは洗う時。クリーニング業者にとっては時限爆弾を抱えるようなものだ」と話す。
ユニクロによると、シームレスダウンの購入客から、同社に「クリーニングを断られた」などの問い合わせが多数寄せられるようになったのは2017年ごろから。ユニクロは「手洗いで自然乾燥」を求める洗濯表示をしていたが、業者の負担が大きく、剝離トラブルのリスクもあり、一部の店舗で拒否されるようになったという。
このため同社は昨年、機械でのまとめ洗い・低温乾燥を繰り返してもそれ自体では剝離しないことを実験で確認。8月以降は複数のクリーニング団体を訪れ、こうした洗い方で剝離した場合、3シーズン以内なら、クリーニング店に返金や交換するとの補償条件を示し、書面で配ったという。
同社は今回、朝日新聞の取材に「検証を行い、クリーニング店でのまとめ洗いが可能であることが分かった。クリーニング店様及びお客様対応において引き続きご協力させて頂きます」とコメント。担当者は「説明すれば、拒否していた店も受け入れてもらえるようになった。表示にも反映したい」と話す。
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