【記者:David Smith】
調和を説きながら、不和を引き起こしているドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領はこの夜、自らが率いる一握りの白人たちの政権に対し、ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長を先頭とする白い服を着た女性たちが張った包囲網を目にした。
トランプ氏による昨年の一般教書演説の際、女性議員らはセクハラ告発運動「#MeToo(私も)」への支持を表明するために黒い服を着ていた。そして今年、史上最多となった民主党の女性下院議員らは、婦人参政権運動に敬意を表し、白い服を着て現れた。
「繁栄するわが国の経済から、女性以上に恩恵を受けている人々はいない。昨年創出された新規雇用の58%は女性が占めている」。こう宣言した直後にトランプ氏は、ショックを受けたようだ。民主党の女性議員たちがすぐさま注目をさらっていったからだ。
キルステン・ジリブランド(Kirsten Gillibrand)上院議員は立ち上がって後ろを振り向き、民主党側の白い服を着た一団に向かって、オーケストラの指揮者のように手を振り上げた。すると100人近い女性議員が立ち上がり、手をたたき、声を上げ、笑い、拳を宙に突き上げた。先の中間選挙で、トランプ氏がその誕生を止めることができなかった集団が一体となった力だった。
トランプ氏は作り笑いを浮かべて言った。「それはやらない約束だろ!」
1年前の一般教書演説で、トランプ氏はリップサービスで調和を訴えた。
今年の一般教書演説は、「私が今夜提示する政策課題は、共和党の課題でも、民主党の課題でもない」で始まった。「これは米国民の課題だ…今夜は皆さんに、偉大さを選ぶよう求めたい」
急速に広がる失望
だが、政治のサンドイッチに挟まっている具は赤く血にまみれている。トランプ氏は、その夜おそらく最も人々を驚かせた言葉、そして今後何年も繰り返し語られるだろう言葉を口にした。「米国では経済の奇跡が起きている──これを止めるものがあるとすれば、愚かな戦争、政治、もしくはばかげた党派的な捜査だけだろう」。そしてさらに「平和と法律があれば、戦争も捜査もあり得ない」と続けた。
この発言は、下院でのトランプ氏に対する弾劾訴追の可能性、特に米大統領選へのロシアの介入疑惑に関するロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官による捜査を直接攻撃したものだ。
これに対し、民主党議員の一部は首を横に振り、反対の意を示した。やじも飛んだ。トランプ氏以上に聴衆を失う才能がある人物はいないだろう。それほど急速に、演説に対する失望が広がっていった。
トランプ氏は、いわゆるメキシコ国境の危機については、演説のうち25段落も費やしたが、気候変動による世界存続の危機については全く触れなかった。「無慈悲なコヨーテ(密入国あっせん業者)、麻薬カルテルや密売人、人身売買組織」や「残忍なギャング組織MS-13」に警戒すべきだと述べ、続けて「大規模で組織化されたキャラバン(移民集団)が米国に向かっている」と述べると、民主党員からはさらなる異議のジェスチャーと不満の声が上がった。さらに、トランプ氏はメキシコとの国境に米兵3750人を追加派遣する指示を出したと述べ、「大規模な襲来に向けた準備だ」と続けた。
またトランプ氏は、中国との貿易戦争と、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」については自らの立場を擁護し、自分が大統領に選ばれていなかったら今頃は北朝鮮と戦争になっていたとの持論を展開し、さらなる民主党の冷笑を誘った。その他、人工妊娠中絶に反対する新たな法律の必要性も主張した。
そして「今夜、われわれは、米国は決して社会主義国にはならないとの決意を新たにする」と宣言すると、共和党議員からは歓迎の声が上がる一方、民主党のアレクサンドリア・オカシオコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)議員は大きく苦笑し、バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員は自分の顎をなでた。おそらく、一般教書演説という場で、このような大統領が、このようなことを大声で叫んでいること自体が、米国における社会主義が期待し得る最大の原動力になると思ったのではないだろうか。
演説は82分という超大作だった。これは、2000年にビル・クリントン(Bill Clinton)氏が行った一般教書演説に次ぐ長さだった。演説が終わると、上院多数派の共和党院内総務を務めるミッチ・マコネル(Mitch McConnell)議員がトランプ氏の背中をたたいた。また4人しか出席しなかった最高裁判事のうちの1人、ブレット・カバナー(Brett Kavanaugh)氏は「良かった」と言ったように見えた。
一方、白いジャケットの女性議員らはその頃には、自分たちの側に勢いがあることを確信しながら、早足で会場を後にしていた。【翻訳編集:AFPBB News】
「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。
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