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NEXCO西日本、「異例の短期間」で完成した関空連絡橋の橋桁を公開。3月中の対面通行規制解除見込む - トラベル Watch

NEXCO西日本が、IHIインフラシステム、高田機工が製作した関空連絡橋の橋桁を公開した

 NEXCO西日本(西日本高速道路)は2月5日、3月中の上下各2車線での通行再開予定を発表した関西国際空港連絡橋(E71)の復旧に使用する橋桁を公開した。

 関空連絡橋については、2018年9月4日に関空に接近した台風21号の影響でタンカー船が衝突したことで重大な損傷を受け、一時は完全に通行止めとなった。その後、上り線を使用した交互対面通行による緊急車両の通行開始、仮設中央分離帯の設置による同時対面通行への切り替え、鉄道の運行再開、タクシー、マイカーの通行規制解除と段階的に交通規制を緩和してきたものの、いまなお上り線を利用した対面通行規制は続いている。

 タンカー船の衝突により損傷したのは、関空島側のA1橋台とP1橋脚の間(長さ約90m)、P1橋脚とP2橋脚の間(長さ約98m)に架けられた2つの橋桁で、これら損傷を受けた橋桁は、2018年9月12日から14日にかけてクレーン船を使って撤去されている。

 関空連絡橋の構造と損傷部位について簡単に説明しておくと、海上では上下2層の構造で上層に車両用の道路、下層に鉄道が通っている。関空島に近づくと道路が上下線で左右に分離し、中央に鉄道が走るような線形となる。今回損傷したのは、この道路が左右に分離した、下り線側(南側)の橋桁となる。

 橋脚への損傷は多少あったものの現場で補修。鉄道桁の損傷は比較的軽度だったことで現地で修復し、早期に復旧したのは既報のとおりである。また、さらに北側にある上り線側の橋桁も大きな損傷はなく、現在はこの上り線側のみを使って車両の通行を行なっている。

2018年9月30日付けのNEXCO西日本のニュースリリースより
台風21号通過直後の2018年9月6日に撮影した関空連絡橋

 NEXCO西日本は2018年9月に「2019年のゴールデンウィークまでに完全復旧することを目指す」と発表。2019年1月18日には、3月中に対面通行規制を解除し、中央分離帯をはさむ上下各2車線を確保する見込みであることを発表した。関空連絡橋は元々上下各3車線の道路であり、その6車線運用への"完全復旧"はゴールデンウィークまでに完了することを目指す方針は変わっていない。

 まずは上下各2車線での再開となることについてNEXCO西日本は、下り車両を中央分離帯を越えて上り線側へ誘導している現状からの元に戻す作業が必要となるためとしており、まずは対面通行規制の解除を最優先し、先行して上下各2車線で運用を行なうことにしたという。

3月中に上下各2車線による4車線化による対面通行規制解除を見込む(1月18日付けのNEXCO西日本のニュースリリースより)

 この上下各2車線への復旧は、損傷を受けて撤去されている橋台/橋脚間に新たに製作した橋桁を架設することで実現。2月12日と13日の夜間に架設作業が行なわれることも発表があったとおり。

 橋桁の製作は、IHIインフラシステム 堺工場(大阪府堺市)と、高田機工 和歌山工場(和歌山県海南市)で製作。P1~P2間の橋桁の製作をIHIインフラシステム、A1~P1間の橋桁の製作を高田機工が担った。

IHIインフラシステム(写真左)と高田機工(写真右)が新たな橋桁の製作を担った
IHIインフラシステムでの橋桁製作工程
高田機工IHIインフラシステムでの橋桁製作工程

 2018年9月12日から14日にかけての橋桁撤去ののち、各橋桁はIHIインフラシステム、高田機工それぞれの工場へ輸送され、陸揚げ後に損傷具合の調査が行なわれた。橋桁の製作について説明したNEXCO西日本 保全サービス事業部 改築課 課長の大原和章氏によると、IHIインフラシステムが担当するP1~P2間の桁については「全長にわたって大きな損傷を受けていたことから再利用は不可能と判断」された。

 一方、A1~P1間の橋桁については、「全長の約6割を再利用している。再利用したのは関空島の陸に掛かっている部分で、船が直接当たっていない」と説明。そのほか、A1~P1間には交通標識があるが、この標識自体も以前のものを再利用。標識を取り付けているコの字型の柱は新造したという。

 橋桁の製作は、橋桁の解体作業と並行して、鋼材/鉄工メーカーから納入した部材の加工からブロック単位での桁の製作、桁の塗装を順次12月中旬までに終え、その後、最終組み立てが行なわれて、両橋桁とも2月1日に完成を迎えた。

 通常、このような橋桁の製作には1年ほど要するというが、今回は5か月という短期間で橋桁が完成し、大原氏も「異例の期間で桁製作ができた」と話す。この理由について大原氏は、「鋼材の納期短縮」「IHIインフラシステムがラインを空けて3ライン同時に橋桁の製作作業を行なったなどの協力」「IHIインフラシステム、高田機工ともに、関空連絡橋の建設当時にJV(ジョイントベンチャー)に参加していた企業の工場が近隣にあったこと」といった点を挙げた。

 復旧費用については、国が2018年度の補正予算として約50億円を予算計上していることから、「この範囲内で橋桁の撤去と復旧を成し遂げたい」(大原氏)としている。

西日本高速道路株式会社 保全サービス事業部 改築課 課長 大原和章氏

 こうして製作された橋桁は幅約14.5m、先述のとおり3車線分の道路に使われ、有効幅員は約13.5mとなる。橋桁の上には仮設後に約7cmの厚さでアスファルトが舗装される。ちなみに、床版は橋桁と一体化した鋼床版となっており、コンクリート床板などは敷設されない。上部にはフローティングクレーンで吊り上げる際のフックをかける部品が取り付けられている。

 いずれの橋桁も中央がやや盛り上がったような形状となっており、両端を架設して自重で中央部が沈みこんだときに水平となるよう設計されている。

 また、製作された下り線側の橋桁の内部には、NEXCO西日本の通信や電力ケーブル、大阪ガスのガス管、NTTの通信ケーブルも通っている。後述する橋桁の写真で、桁の外側に足場があるが、それがガス管が通っているところで、こちら側が鉄道桁側(橋の内側)となる。

 ガス管は上り線側の橋桁にも設置されていたことで関空島への供給が止まることがなかったが、NTTの通信ケーブルは9月4日の損傷直後、関空島内の電話やインターネット通信などが途絶える事態が発生した。損傷した橋桁の撤去が行なわれる前にほかの橋桁へと仮設のケーブルをほかの橋桁へ迂回させているというが、こちらも下り線側の橋桁へ本復旧することになる。

 今後、2月7日に高田機工、2月8日にIHIインフラシステムでそれぞれ台船への積み込み(浜出し)作業が行なわれ、既報のとおり、2月12日夜にA1~P1間、13日夜にP1~P2間をフローティングクレーン船を用いて関空連絡橋へと架設する。

 架設にあたっては夜間の作業を最短とすべく、昼間のうちにフローティングクレーンでの吊り上げ作業を実施する。吊り上げた状態での待機が続くことになるが、架設作業が行なわれる時間帯を除いては、関空島からやや離れた位置で待機することで航空機の離着陸に影響が出ないようにするという。下り2車線、上り1車線で運用している上り線の3車線についても、夜間の架設作業中は、上り/下り各1車線の対面通行に規制する予定としている。

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