千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅浴室で死亡した事件で、県警が傷害の疑いで逮捕した母親のなぎさ容疑者(31)が、心愛さんが死亡した1月24日、父親の勇一郎容疑者(41)=同容疑で逮捕=と共に「午前中から自宅にいた」と逮捕前の任意聴取に話していたことが4日、捜査関係者への取材で分かった。
捜査関係者によると、勇一郎容疑者は24日の「午前10時ごろからしつけで休ませずに立たせた。悪いことをしたとは思っていない」と供述。県警は、なぎさ容疑者が勇一郎容疑者を制止せず、黙認していたとみて詳しい状況を調べる。勇一郎容疑者からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていた可能性があるとの情報も把握。暴行に積極的に加わってはおらず、従属的立場だったとみている。
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目の前で繰り広げられる勇一郎容疑者の凄惨(せいさん)な虐待を、妻のなぎさ容疑者はなぜ黙認していたのか−。背景には、なぎさ容疑者自らも夫から「暴力の支配」を受けていた実態が浮かぶ。こうした黙認のケースは過去にも繰り返されており、専門家は関係機関の情報共有と連携を訴える。
なぎさ容疑者は、死亡した心愛さんへの暴行を黙認した疑いがあるほか、勇一郎容疑者の"異常な行動"にも手を貸したとされる。
柏児童相談所が平成29年12月27日に心愛さんの一時保護を解除。勇一郎容疑者が30年1月12日、千葉県野田市の学校側に「暴力がなかった証し」と苦情を訴え、心愛さんが父の暴行を訴えた学校アンケートの回答を見せるよう要求した際、なぎさ容疑者も同席していた。
さらに同15日の交渉の場で、勇一郎容疑者が市教委に提示した学校アンケート公開に関する同意書を、なぎさ容疑者が心愛さんの自筆だと証言。アンケートのコピーが勇一郎容疑者の手に渡る後押しをした。
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なぜ、なぎさ容疑者はそんな行動をとったのか。児童虐待防止全国ネットワークの吉田恒雄理事長は「暴力の矛先が自分に向くという恐怖心から従っていたのではないか」と推察する。
一家が野田市に移り住む前の沖縄県糸満市には29年7月、勇一郎容疑者から心愛さんへの恫喝(どうかつ)のほか、なぎさ容疑者にも勇一郎容疑者が支配的で「外出や携帯電話をチェックする」と親族から情報提供があった。なぎさ容疑者へのDVの情報は野田市にも伝えられた。
糸満市で近所に住んでいた女性(65)は「心愛さんが小さいときから(なぎさ容疑者は)ふさぎ込みがちだった」と証言。女性は結婚前、優しかった勇一郎容疑者の態度が結婚後に急変したのが原因だったと聞いたとしている。
元児相所長で児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長も「力関係で支配されていたのだろう」とみる。
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父親(内縁も含む)による子供の虐待を母親が黙認するなどしたケースは過去にも繰り返されてきた。
虐待は家庭の中で行われるケースが多く、露呈しにくい。ただ、今回の心愛さんのケースでは、親族からの情報提供や学校アンケートなど行政や児相側が把握する機会は多かった。さらに、児相はDVがなくなっていない疑いを把握しながら、なぎさ容疑者への聞き取り調査を行っていなかったとされる。
過去のケースから、児童虐待の陰に夫婦間などのDVの存在があることは少なくない。警察や行政、学校など虐待とDVに対応する関係機関が情報を共有し、双方を視野に入れておく必要がある。
吉田氏は「児相と市など関係機関がどう連携し、協議してきたのか。今までの教訓が全く生かされていない」。津崎氏は「SOSを発しなかった母の落ち度は否定できないが、関係機関の対応が非常にまずかった印象がある」と話した。
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